近くにいませんか?カヤコオロギ【ふれあいの里だより(令和2年9月号)】
更新日:2020年9月1日
8月、立秋を前にやっと梅雨が明けたと思ったら猛暑の日々。夜もセミの声が聞こえてきていました。それでもお盆のころから夜に聞こえてくるのはハヤシノウマオイやカネタタキ、コオロギの仲間たちの声に変わりました。
昼間はまだあまりコオロギの仲間たちの鳴き声は聞こえてきませんが、草むらでぴょんぴょんと飛び跳ねる小さな生きものがいます。ショウリョウバッタやオンブバッタ、そして中にはカヤコオロギもいるかもしれません。
カヤコオロギは、マツムシ科で学名のEuscyrtus japonicus (Shiraki)が示すように日本固有種です。コオロギと名前についていますが、翅は短く発音器を持たないので、飛ぶことも鳴くこともできません。
成虫が見られるのは8月から10月ころ。体長は1センチメートル程度で体長の倍近くの触角を持ち、メスには長い産卵管があります。黄褐色の体に背中の黒い部分が目につくとはいえ何といっても小さいのでなかなか見つけるのは難しいです。
絶滅の恐れがあるとされているマツムシを小さくしたようなイメージで、生息地や産卵方法なども似ています。絶滅の恐れがあることも同じで埼玉県でも絶滅危惧種となっています。
カヤコオロギは、本州、四国、九州のチガヤやススキなどイネ科の植物が生える雑木林の林床から低茎草地に生息しています。生息地は局所的でそこでは多数いるものの飛べないこともあり一度生息地の環境が変わって棲めなくなると復活は難しくなっています。これで美しい声で鳴いていればもっと注目されてきたのでしょうが残念ながら人知れず姿を消そうとしています。
イネ科の葉に縦に細長くあいた独特の食痕があれば注意して探してみてください。飛びさることはできませんがジャンプは得意です。それもそのはず小さな体に対して後ろ足の腿がかなり発達しています。絶滅の恐れがあるとはいえ生息自体が確認されていない場所も多く、生態もよくわかっていないところがあります。
鳴かないので求愛行動はおそらくフェロモンか振動ディスプレイではないかと考えられていて、イネ科の葉の付け根の部分に産卵します。
カヤコオロギが依存しているチガヤは古くから日本人の身近で雑草として迷惑がられる反面、食用にされたり魔除けに使われたりしてきました。花言葉に「みんなで一緒にいたい」があります。これはカヤコオロギの願いのようにも思えてきます。食痕をみつけたらあたりの草を残しておいてあげてくださいね。
ススキの名所、月の名所として古くから知られた武蔵野に、狭山丘陵も含まれます。今年の十五夜は10月1日。9月24日は上弦で、翌日は木星、土星、月が集います。秋の日は釣瓶落とし。美しい夕景も楽しみなころです。
行く鳥に来る鳥、冬越しのために移動し始めている野鳥たち。ガマズミやムラサキシキブをはじめ木々の実りが今年はあまりよくありませんが、野鳥たちにとっては大切な食糧です。食糧と言えば昆虫たち。トンボやチョウも数多く目にする時季です。
秋の季語『花野』が広がる風景を作っているのはヌスビトハギ、ワレモコウ、ユウガギクなど数多くの花々で、ススキの穂も美しく風に揺れます。9月22日は秋分。朝夕に秋を感じる日も増えてくることでしょう。
アキアカネ
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ワレモコウ
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休館日
月曜、祝日の翌日(その日が休日の場合を除く)、12月29日から1月3日