令和3年8月号 森田耕一さん(所沢市消防団長・埼玉県消防協会会長)

更新日:2021年7月27日

プロフィール

森田耕一もりたこういちさん

(牛沼在住・在勤)

市内10の分団、総勢300人以上を束ねる消防団長。
現在は、県内消防団のトップである消防協会の会長も務める。
23歳で入団し、団歴は43年。
令和2年には長年の功績から埼玉県地方自治功労賞を受賞。
本業は「フラワーハウス」(園芸店)。
趣味で作る野菜は元農家のノウハウを生かした自慢の逸品。

いつもはお花屋さん。でも実は地域を守る消防団長

「火事だ!」。
通報が入ると本業を中断し、火災現場に向かう。
私たちの暮らしを守る所沢市消防団をまとめ上げるのが森田耕一もりたこういちさんだ。
「子どもの頃はいたずらっ子だったなあ」と豪快に笑った。
 
地元の農家に生まれ育った生粋の「ところっこ」。
家業を継ぐまでは消防士になりたいと憧れていたが、進学を悩んでいた大学にストレートで合格したことから、進学。卒業後は農家に。
23歳の時、当時の第4分団班長から消防団への勧誘を受けた。
かつての消防士への憧れ、ましてご近所さんの班長からの誘いを断る理由は無かった。
  
入団してすぐに参加した「ポンプ車操法大会」では苦い思い出も残る。
大会では、市内10個の分団が基本動作の正確さとスピードを競い、優勝すると県大会、全国大会へと勝ち上がっていく。
入団して間もない森田さんは右も左も分からない状態で、教わるままに動きを覚えた。
仕事終わりに週3回、夜遅くにまで及ぶ訓練。
加えて、当時の厳しい上下関係に心身ともに苦労ばかりだったが、努力もむなしく結果は下位。

「受け身ではダメ。いかにミス無く、良い操法をするかが大切」。
そう気づいた森田さんは戦略を練り、着実に訓練を重ねた。
そして班長となった平成6年、分団を初優勝へと導き、その後は長らく上位に入る強豪に。
それは森田さんの誇りとなり、分団にかけがえのない仲間ができた。
 
大会での経験は、有事の際はもちろん、団を運営する立場となった今も生かされ、団員が長く続けられるようなより良い体制を作ろうと日々模索している。
 
人生の半分以上を消防団にささげてきた森田さん。
「災害時にはあの黒と黄色の警戒線の中に入る」。
その緊張感を思い出し、声色が変わった。「火災現場の独特なにおいは忘れられない」。
厳しい現実とも向き合わなければならない消防団をなぜ43年もの間続けてこられたのか。
 
「やりたいことをやらせてくれている、かみさんの理解に感謝ですね」。
現在、年間100日以上の会議や研修を抱える森田さんを、文句ひとつ言わず送り出してくれる奥様。その存在は心の支えだ。
 
そして最大の原動力は「自分たちのまちを自分たちで守る」という信念。
「東京で大災害が起こると、所沢は都心への救援の通過点となります。まずは自分の身を自分で守れるように最大限の準備をしてほしいです。そして、困った時には地元の消防団を頼ってほしい。そのために我々も日頃から精進していきます」。
 
当たり前の日常が崩れそうな時、「当たり前」を取り戻す助けとなる、消防団の存在。
平時から備える身近な消防団を忘れずに、私たちも今、できる備えをしていきたい。
(取材:齋藤)

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