令和4年6月号 宇津木 秀さん(プロボクサー・第63代日本ライト級王者)

更新日:2022年5月27日

プロフィール

宇津木 秀 さん

(緑町在住)

2018年3月にプロボクサーとしてデビュー以来、10戦10勝(8KO)。
今年の2月8日に日本ライト級王座決定戦で勝利し、第63代王者となる。
北小学校、向陽中出身。
趣味はボウリング。マイボールも持っている。

「勝つことが最大の恩返し」 無敗のプロボクサー

9ラウンドTKO勝ち。走馬灯のように、父親との二人三脚の日々や育ててくれた祖母の姿がよぎる。気が付くと、泣きながら雄叫びを上げていた。
この日、日本ライト級王者となった宇津木 秀さん。「やっと恩返しができたという思いでした」と、その瞬間の心境を振り返る。
 

ボクシングを始めたのは、中学2年の夏。通っていた清瀬のボクシングジムで花咲徳栄高校ボクシング部の木庭監督に出会い、同校に進学。ボクシング漬けの生活が始まった。
通学は片道2時間以上。朝夕の練習だけでなく、夜8時過ぎの帰宅後もランニングやジムトレーニング、父親相手のミット打ちなどに励む日々。高校3年の頃には、全国レベルの大会で結果を出すようになっていた。
系列の平成国際大学に進学し、ボクシング部の主将も務めたが、この頃、宇津木さんの中で変化が起こる。ボクシングへの熱が冷めていってしまったのだ。「今思えば、アマチュアのボクシングには向いていなかった。続くトーナメント戦の負担と主将の重圧。しんどさから、『勝ちたい』というモチベーションが保てなくなってしまいました」。
卒業後は水道工事店でのアルバイト生活。母校のコーチとしてサポートなどに携わることはあっても、自分が選手として再び活動することはないと思っていた。

 
そんな宇津木さんを再び駆り立てる転機となったのが、2017年5月の世界チャンピオンの試合観戦だった。熱狂する観客席を目にした時、もう一度挑戦してみたいという強い思いが沸き上がった。
2017年12月、全日本社会人選手権大会に出場し、優勝。翌月にプロテストに合格。2カ月後の3月27日にデビュー戦を勝利で飾って以来、負けなしの快進撃を続けている。「1試合1試合に全てを賭けるプロの世界は、自分に合っている。日々強くなっているという実感があり、楽しいです」と話す笑顔はあくまで自然体。おごりも気負いも感じられない。
 
宇津木さんと話をしていると、何度も「感謝」という言葉が出てくる。好きなボクシングを仕事にできるありがたさ、支えてくれる全ての人への感謝の気持ちで、心が折れることがない、勝つことが最大の恩返しなのだと。宇津木さんの強さの秘密が垣間見えた気がした。
夢は世界。いつか所沢で世界の防衛戦をしたいという宇津木さん。夢への次の一歩、初防衛戦のゴングは6月14日に鳴らされる。


(取材:加賀谷)

WEB版こぼれ話

チャンピオンはとっても気さく

インタビュー当日。
「あ、持ってきましたよ」と、宇津木さんがバッグからひょいと取り出したのは、なんとチャンピオンベルト。
色めき立つ担当者一同に、「いつか、別のチャンピオンベルトもお持ちしますね」と飄々と語る宇津木さん。
一方、本物のチャンピオンベルトに触らせてもらったり、肩にかけて記念写真を撮ったりと、仕事を一瞬忘れて大興奮の担当者たちでした。

チャンピオンはとっても怖がり?

ご本人いわく、「とても怖がり」。
試合前は恐怖や不安で眠れないし、腹痛になることも。
そんなときの気分転換は、「とにかく話すこと」だそう。
友人ともスタッフとも、「たくさん話す」ことを心がけるという宇津木さん、コミュニケーション能力の高さもスキルのひとつとお見受けしました。

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