令和6年7月号 長森晴さん(スポーツクライミング選手)

更新日:2024年6月26日

プロフィール

長森 晴さん

(市内在住)

 好きなものは、友だちとのバスケットボール、ヒップホップ、味噌ラーメン。プールよりも海派の15歳。身長175センチメートルでまだ伸びるかも。
 この春からは高校生。新しい環境に少し緊張しているそう。
 写真は、5月の日本選手権で獲得したメダル。

ひらり高みへ 世界へ羽ばたく15歳

 すらりとした手足を、ひらりと動かして、あっという間に壁を登っていく。まるで重さを感じさせないダンスのような軽やかさだ。けれどもよく見ると、指先から背中にかけてとふくらはぎの筋肉がパーツごとに浮き上がっていて、アスリートであることが分かる。さらに、手の爪がとても小さく、指紋が削られているのは、クライミング選手の特徴だ。
 スポーツ好きな家庭に育ち、当時メジャーとは言えないクライミングを、習い事として9歳から始めた。
 スポーツクライミングには、「リード」「ボルダリング」「スピード」の3種目がある。長森選手は、リード種目とボルダリング種目をメインに競技している。
 リード種目では、12メートル以上の壁に設定されたコースを登り、到達高度を競う。選手は、ハーネスを装着し、ロープを支点にかけながら登っていく。「持久力」や「テクニック」が重要な要素だ。
 一方、ボルダリング種目は5メートルの壁に、複数のコース(課題)があり、制限時間内にどれだけ多くのコースを登れたかを競う。安全器具は地面の衝撃吸収マットのみで、選手はしばしば落下を経験する。他の選手の動きを見つつ、コースの「見極め」や「戦略」を立てる必要がある。
 2020年、11歳で初めてユース大会に出場以後、いろいろな大会で経験を積んできた。5月に開催された岩手県での日本選手権では、リード種目で優勝、ボルダリング種目で準優勝に輝いている。世界大会でも強さを見せつけ、昨年に開催されたIFSC世界ユース選手権、IFSCアジアユース選手権において、リード種目とボルダリング種目の両方で入賞している。
 ボルダリング種目とリード種目、どちらか一方を得意とする選手が多いなか、長森選手は二刀流で邁進している。「自分が知っている範囲では、自分と同じレベルの二刀流の選手は数人しかいない」とのこと。
 この春から高校に進学した。平日は学校とトレーニング、週末は学校の課題とトレーニング。忙しくも充実した毎日を送っている。大学進学、ユース卒業、大学卒業のタイミングで競技としてのクライミングから引退する選手が多いそう。「競技選手を長く続けるのは意外と難しいんですよ」と話すなかで、ロサンゼルス五輪出場、シニアへの移行も視野に入ってきている。
 「ラーメン屋の看板は目に入れないように歩いている」「ぽてちは何年も食べてない」と少しはにかんで話す様子は、どこにでもいる高校生。けれども、世界トップレベルの舞台で戦う青年は、自分のこと、競技のこと、これからのことを冷静に見据えているのだろう。静かな闘志とともに、困難な状況もひらりと、乗り超えていくに違いない。
(取材:上地)

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